- 目次
- イントロダクション
- 経費の基本的な意味と会計上の位置づけ
- 歯科医院の主な経費項目
- 経費削減のアイディアと注意点
- まとめ
歯科医院の経費管理はとても重要!でもやりすぎに要注意!
イントロダクション
歯科医院を経営することは、多面的な役割を果たすことを求められます。歯科医師としての専門的な治療技術はもちろんのこと、人事管理、マーケティング、経営戦略や中長期的なビジョン、そして財務・会計管理も含まれます。その中でも特に経営者として重要性が強調されるのが「歯科医院の経費の管理」です。
「経費」といえば、歯科医師の先輩たちが飲み会で「領収書ください。宛名はなしで」という会話を聞いたことがあるでしょう。賢明な経費管理は、ビジネスの健全性を維持し、短期的なキャッシュフローと長期的な成長の両方をサポートするための不可欠なスキルです。
しかし、一方で、経費は個人事業主なのか、医療法人なのか、別の株式会社で管理するのかなど、1人で管理するには難解かつ煩雑です。具体的な経費管理の方法は何か、何を経費として計上できるのか、また経費の意味は何なのか、という点が明確でない場合も少なくありません。それらの問いに対する明確な理解は、経営者が資源を最適に活用し、ビジネスの成功に繋げるための第一歩となります。
そこでこの記事では、歯科医院の経営者が経費について把握すべき基本的な情報を教えます。まずは「経費」という言葉が具体的に何を指し、会計上どのように位置づけられるのか、という基本的な理解から始めます。そして、その上で、歯科医院において具体的にどのような経費項目が発生し、それらが医院の財務状況にどのように影響するのかを詳細に解説します。本記事を通じて、経営者自身が経費管理の重要性を深く理解し、その知識を具体的な経営の現場に生かすことができれば幸いです。
経費ってなんでもかんでも計上できるものではないんです!飲み会費用だけが経費って考えるのは大間違い!
経費の基本的な意味と会計上の位置づけ
経営における「経費」の概念を理解するためには、まず基本的な定義から始めることが重要です。経費とは、事業を運営するために支出される金額のことを指します。これには、賃金、レンタル料、補給品、電力費、広告費など、さまざまなカテゴリーの支出が含まれます。すべての経費は、事業の運営に必要なものであり、その規模や性質は事業の種類により大きく変わります。
歯科医院で購入する材料や、テナント費用、ユニットリース代なども経費ですね。
会計における経費は主に2つの観点から捉えられます。「財務会計」と「管理会計」です。財務会計は、外部のステークホルダー(取引先の銀行、クレジットカード会社、税務当局など)に対して事業の財務状況を報告するためのものです。財務会計のフォーマットはBS(balanced sheet:貸借対照表)、PL(profit&loss:損益計算書)、CF(cashflow:キャッシュフロー計算書)があります。これは会計上の報告文書になるので、国が記載方法を決めています。その中で、経費は、損益計算書(収益と費用を記録する文書)の一部として記録され、事業の利益性を評価する際の重要な要素となります。
一方、管理会計は、経営者が事業の運営をより効率的に行うための内部的なツールです。特に決まったフォーマットはありません。経費は、各部門やプロジェクトのパフォーマンスを評価する際の基準となります。例えば、特定のサービスの経費を分析することで、そのサービスが事業に対してどれだけの価値を提供しているのかを評価することが可能になります。
財務会計や管理会計はまた別記事で解説しますね。歯科医院の会計管理はそこまで難しくありません。(大規模法人は別ですw)
経費はさらに、「固定経費」と「変動経費」に分けることができます。固定経費は、事業の規模に関係なく一定のレベルで発生する経費です。例えば、レンタル料やサラリーなどがこれに該当します。一方、変動経費は、事業の規模や活動レベルに応じて変化する経費で、直接的な製品やサービスの提供に関連して発生します。例えば、歯科材料や使用量に応じた電力費などがこれに該当します。
これらの経費の分類と理解は、経営の成長や規模を正確に評価するために不可欠です。例えば、固定経費は規模に関わらず一定であるため、事業が拡大するとその割合は全体の経費に対して低下します。一方、変動経費は直接的にビジネスの活動レベルにリンクしているため、売上が増加すれば増加するほど、変動経費も増加します。したがって、これらの経費の分析は、利益マージンの改善やコスト削減の機会を特定するための重要なツールとなります。
固定費が増え続けると毎月の支払いを苦しむことも・・
また、経費の管理はリスク管理にも直接関連しています。固定経費が高い事業は、売上が減少した場合、その影響を強く受ける可能性があります。なぜなら、固定経費は売上に関わらず一定であり、その支払いを維持するためには一定レベルの収益が必要だからです。一方、変動経費が高い事業は、ビジネスの活動レベルが変わるとその影響を直接受けます。つまり、売上が減少した場合、変動経費も同時に減少し、その影響を緩和することが可能です。
さらに、経費の管理は税金計算にも影響を与えます。多くの場合、事業経費は課税所得を減らすための控除項目となります。したがって、経費の正確な追跡と報告は、税金負担を適切に管理するためにも必要です。
これらの情報を踏まえると、経費管理は単に「支出を減らす」ことだけでなく、事業の健全な成長と持続可能性を支えるための重要な活動であることが理解できます。
歯科医院の主な経費項目
歯科医院で一般的に発生する経費として計上可能な主要な項目を以下にまとめました。ただし、詳細な取扱いや計上の仕方は、クリニック担当の会計士や税理士と相談しながら適切に行うようにしてください。以下のまとめは参考の一部であり、完全に網羅しているわけではないことをご了承ください。
- 人件費:給与、ボーナス、福利厚生費用、研修費用、社会保険料など
- 医療材料費:詰め物、インプラント、矯正器具、消耗品など
- 設備投資:歯科治療機器、IT機器、オフィス家具など
- レンタル費用:医療機器のリース料、物件の賃貸料など
- 公共料金:電気、ガス、水道、通信費用など
- 広告宣伝費:ウェブサイト運用費、広告料、印刷費、デザイン料など
- 保険料:医療過誤保険、賠償責任保険、物損保険など
- 事務用品費:オフィス用品、消耗品など
- 研修費用:セミナー参加費、研修旅費など
- 交通費:患者訪問費、出張費など
- 専門家費用:会計士、税理士、弁護士などの報酬
- 修繕費:設備の修理費、建物の維持費など
- 消耗品費:診療用具、掃除用具など
- 税金、公課:固定資産税、事業税、都市計画税など
など、さまざまな項目が挙げられます。その中でも管理が必要なものを代表的にあげたいと思います。
まず、歯科医院経営における最も大きな経費項目の一つが人件費です。これには歯科医師の給与だけでなく、歯科衛生士や受付スタッフ、事務スタッフなどの給与も含まれます。さらに、健康保険や雇用保険などの社会保険料も考慮する必要があります。人件費は経営の規模やスタッフの数、雇用形態などにより大きく変動しますが、一般的には全体の経費の中で大きな割合を占めます。適切なスタッフの配置と給与設定は、歯科医院経営において重要な課題となります。
次に、設備投資です。これには診療台やレントゲン機器、歯科材料、消耗品など、診療に必要な機器や材料の購入費用が含まれます。設備投資は初期投資として一度に大きな出費となることもありますが、それらの設備や材料が劣化したり、新たな技術が出てきたときに更新が必要となるため、継続的な経費として計上する必要があります。設備の選択や更新時期の判断は、治療の質や効率、そして経費管理に大きく影響します。
最後に、広告費です。新患獲得のための広告宣伝費は、歯科医院経営において重要な投資です。ホームページ制作や更新、SNS運用、地域の新聞や雑誌への広告掲載など、広告にはさまざまな形があります。広告の効果を最大化するためには、ターゲットとする患者層のニーズを理解し、それに適したメッセージとメディアを選択することが重要です。広告費の適切な管理と効果測定は、投資効果を最大化し、無駄な支出を削減するための鍵となります。
これらの経費項目は、歯科医院経営における重要な要素であり、それぞれに独自の管理戦略と効率化のテクニックが必要です。しかし、経費管理の最終的な目標は、無駄な出費を削減し利益を最大化することだけでなく、最高の患者ケアを提供し、スタッフの満足度を高め、自身のビジョンに合ったクリニックを運営することです。
さらに、経費管理は会計と密接に関わりがあります。事業の収益性を把握し、将来の投資計画を立てるためには、正確な経費計上と適切な財務分析が不可欠です。また、税金の計算も経費に大きく影響します。適切な経費管理と会計は、適切な税金の支払いと税務リスクの最小化につながります。
最後に、特に注目すべきは、設備投資に関する経費です。高額な医療機器を購入する場合、リース契約を結ぶという選択肢もあります。リース契約は、大きな一時的な出費を抑えつつ、常に最新の設備を使用することができます。ただし、リースと購入のどちらが適しているかは、具体的な条件や経営の状況によります。
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経費削減のアイディアと注意点
歯科医院の経営における経費削減の取り組みは、その効率化に大いに貢献します。しかし、その一方で盲目的な経費削減はサービスの品質や患者満足度に影響を及ぼす可能性があるため、戦略的なアプローチが必要です。
まず一つ目のアイデアとして、設備投資についてです。最新の設備を導入することは高額な初期投資を伴うため、経費としては大きな負担になります。しかし、長期的に見ると、効率性や生産性の向上、また患者の満足度向上につながる可能性があります。
二つ目のアイデアは、供給者との交渉です。特定のサプライヤーとの長期契約を結ぶことで、物品やサービスの価格を抑えることが可能です。これは、一見すると時間と労力を要する作業かもしれませんが、長期的には大きな経費削減につながる可能性があります。
三つ目のアイディアは、クレジットカード決済の導入です。これは二つの観点から経費削減に寄与します。一つ目は、クレジットカード会社から提供されるポイントやキャッシュバックによる実質的な割引です。二つ目は、現金管理の手間を省くことで、間接的な人件費削減が期待できる点です。
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しかしながら、クレジットカード決済には手数料が発生しますので、その手数料がポイント等のメリットを上回らないか、慎重に検討する必要があります。また、患者さんのプライバシーや情報セキュリティも考慮し、信頼性のある決済サービスを選ぶことが重要です。
最後に、人件費の削減も一つのアプローチとしてありますが、人件費を盲目的に削減すると、スタッフのモチベーション低下やサービス品質の低下を引き起こす可能性があります。したがって、効率化や生産性
の向上を目指す一方で、スタッフの満足度やモチベーションも維持するバランスが求められます。
人件費削減の一つのアプローチとして、効率的なスケジューリングがあります。すなわち、ピーク時間やオフピーク時間を明確に把握し、スタッフを必要な時間帯に配置することです。これにより、人件費を無駄に使うことなく、クリニックの運営をスムーズに行うことができます。
また、スタッフの研修や教育に投資することで、長期的には人件費の削減につながることもあります。スキルアップしたスタッフは効率的に仕事をこなすことができ、ミスの減少により再作業が減ります。これにより、長期的には人件費の削減とともに、クリニックのサービス品質向上にも寄与します。
一方、広告費については、最新のデジタルマーケティング手法を活用することで効率的に広告を行うことが可能です。SNSやGoogle Adwordsなどのオンライン広告は、ターゲットを絞り込んで広告を配信することができるため、広告の効果を最大化しながら経費を抑えることが可能です。ただし、これらの広告手法は専門知識が必要なため、必要に応じて外部の専門家に依頼することも考えられます。
経費削減の取り組みは、ただ単にコストを削るだけではなく、クリニックの効率化と品質維持を両立させることが重要です。そのためには、各経費項目について深く理解し、戦略的な視点からアプローチすることが求められます。
まとめ
歯科医院の経営において、経費管理は極めて重要な要素です。適切な経費管理は、ビジネスの利益性を高めるだけでなく、クリニックの運営をスムーズにする上でも不可欠です。
今回の記事では、経費とは何か、その会計上の位置づけ、そして歯科医院における主要な経費項目について詳しく解説しました。人件費、設備投資、日常の運営経費など、様々な経費項目が存在し、それぞれがクリニック経営に重要な影響を与えています。
さらに、具体的な経費削減のアイディアとその実行に当たっての注意点についても述べました。人件費の効率的な管理からデジタルマーケティング手法の活用まで、経費削減は多角的な視点からアプローチする必要があります。
最後に、経費削減はただ単にコストを削るだけではなく、クリニックの効率化と品質維持を両立させることが重要であることを強調したいと思います。この記事が、あなたの経費管理に対する理解を深め、クリニック経営の一助となることを願っています。