目次:
- はじめに
- 新規開業のメリットとデメリット
- 事業承継のメリットとデメリット
- 自分に合った選択をするためのポイント
- まとめ
はじめに
歯科医院経営を検討している若手歯科医師の先生方、新規開業と事業承継のどちらを選ぶか迷っていませんか?この記事では、それぞれのメリットとデメリットを徹底解説し、先生方のの経営スタイルに合った選択を検討できるようにサポートします!
経営って聞くととても難しそうなイメージ・・。でも問題ありません!
新規開業のメリットとデメリット:夢を追いかける道のり
まずはじめに前提として、新規開業は、あなたのビジョンを具現化するための一つの手段です。歯科医師は開業してなんぼ!という話は先輩たちから聞きますが、無理して開業する必要はありません。しかし、新規で開業することは、自分の哲学や価値観を反映したクリニックをつくることができますし、何よりも自分自身のボスであるという満足感は計り知れません。新規開業は、治療方針やクリニックの運営について自分の判断が全てを左右します。これは自由と創造性を追求する人々にとっては、まさに理想的な状況でしょう。
しかし、新規開業にはその特有のリスクも含まれています。まず第一に、新規開業には大きな資金が必要です。基本的に銀行から融資を受け開業資金を準備する形になります。その融資で、医療機器などの設備や資材を揃えるだけでなく、開業初期の運転資金も必要になるでしょう。資金調達には銀行融資以外にも自己資金、あるいは親族からの資金提供など様々な方法がありますが、それぞれに一定のリスクと負担が伴います。
また、新規開業では一から患者を集める必要があります。一部の都市部では、集客(集患)が激化し、広告宣伝費だけでも月100万円程度かかっているエリアも存在します。自院の適切なブランディングを行うためには、市場調査や競合分析を行い、自分のクリニックが地域社会にどのような価値を提供できるのかを明確にすることが求められます。これには歯科医師の技術研鑽だけでは太刀打ちできず、経営学的なマーケティングスキルと広範なネットワーキングが必要となります。
新規開業のメリットとデメリットを理解した上で、自分自身が新規開業に向いているのか、またはそれに対するリスク許容度がどの程度かを見極めることが重要です。
事業承継のメリットとデメリット:すでに舗道された道を歩む
事業承継には、親子継承や、第3者継承などが挙げられます。事業承継の最大のメリットは、すでに構築されたビジネスモデルと、そこに基づいて形成されたクライアントベース(患者)を引き継ぐことができる点です。すでに市場である程度の評価を受けているブランドを引き継ぎ、既存の患者からの信頼を維持しながら経営を進めることができます。これは、新規開業した場合には時間とコストがかかるブランド構築や顧客獲得を一定の範囲でスキップすることができるという大きな利点となります。
さらに、既存のビジネスが抱えるオペレーションのノウハウや医院経営システムも引き継ぐことができます。これは、新規にクリニックを開設するときには0から作り上げる必要がある部分で、ほとんどのクリニックはシステムを組み上げるために莫大な時間と労力を割いています。場合によっては10年以上の歳月をかけて構築しているケースもあります。そのため、事業承継は特に経営に対する経験が少ない歯科医師にとっては、経営の初期段階でのハードルを下げることができます。
しかし、事業承継にはデメリットも存在します。一つは、既存の組織文化や経営スタイルを一変させるのが困難なことです。引き継いだクリニックが長年培ってきた文化や習慣を変えるのは容易ではありません。組織構造やマネジメントシステムの変更は系統立てて行うことがとても重要になり、やり方を間違えると組織が崩壊する可能性もあります。また、従業員や患者が医院経営スタイルの変更に対して抵抗を示すこともあります。さらに、前院長との関係性悪化による組織分裂、方向性の変更など予期せぬ事態になる可能性もあります。そのため、自分のビジョンや経営スタイルに大きく合わない場合、事業承継は困難になる可能性があります。
さらに、事業承継には高額な費用がかかることもあります。引き継ぎの交渉、法律的な手続き、資産の評価などにはコストが発生します。ほとんどの場合、20~30年使用している設備のため、リフォームや老朽化により基礎工事からやりかえなどが発生します。そのため、初期投資を抑えたいと考えている場合、新規開業の方が適している場合もあります。
私は事業承継という道を選びましたが、クリニックの老朽化問題に直面し、組織を引き継いで移転開業という道を選択しました。
自分に合った選択をするためのポイント
自分に合った選択をするためには、以下のようなポイントを考慮すると良いでしょう。
- 自己のビジョンと目標: 自身がどのような歯科医院を運営したいのか、そのビジョンと目標を明確にします。自分の理想のクリニック像と、新規開業や事業承継で手に入るものが一致するかどうかを考えましょう。
- 経営スキルと経験: あなたが過去にどの程度の経営経験を持っているかも大切な要素です。経営経験が少ない場合、事業承継で得られる既存のシステムやノウハウが有用となる可能性があります。
- 資金的な制約: 事業承継と新規開業では必要な初期投資が異なります。自分がどの程度の資金を投じることができるのか、また、そのリスクをどの程度許容できるのかを慎重に評価します。
- 市場環境と競争状況: 所在地の市場環境や競争状況も考慮する必要があります。新規開業を考える場合、その地域にはすでにどの程度の歯科医院が存在しているのか、どのようなニーズがあるのかを調査します。事業承継を考える場合、引き継ぎたいクリニックの地域での評価や立場を確認します。
- 法律や規制: 所在地の法律や規制も考慮します。事業承継にあたっては、契約や交渉に関する法律の理解が必要です。新規開業の場合は、設立に関する法律や規制、設備基準などについて理解しておくことが重要です。
まとめ
新規開業と事業承継、それぞれにはメリットとデメリットがあります。あなた自身のビジョン、能力、資金繰り、地域の市場状況、法律や規制を考慮して、自分に最も適した選択をしましょう。新規開業は、自己のビジョンを完全に追求し、オリジナルのサービスを提供する自由度が高い選択です。一方、事業承継は、既存の成功したビジネスモデルと顧客基盤を継承し、それを発展させるという道が開かれています。
どちらを選択するかは、あなた自身の個々の状況とビジョンに大きく影響を受けます。自分自身が地域にどのような医療を展開していきたいのかを慎重に検討を行い、リスクとリターンをバランス良く考えることが求められます。自身の目指す目標と、それを達成するための道筋を明確にし、自分自身にとって最適な選択をすることが大切です。
どちらの道を選んだとしても、経営者としての役割は大変ですが、それはあなたが自分自身のビジョンを実現し、地域の人々の健康と生活の質向上に寄与するという貴重な機会でもあります。
あなたの決断が、あなた自身のキャリア、スタッフの成長、そして患者の健康と幸福に対してプラスの影響があることを信じています。後悔しない選択をすることが大切です。
結論として、自分自身が歩みたい道を確認し、そのためにどの経営形態が最適であるかを見極めることが必要です。新規開業と事業承継のどちらを選んでも、成功のためには情熱、献身性、そして強いビジョンが必要不可欠です。
これからの経営者としての道のりは、きっと困難に満ちているでしょう。しかし、その困難さだけでなく、それがもたらす達成感や喜びも大きいはずです。経営者としての冒険が、あなたにとって価値あるものとなり、そしてあなたがその道を歩むことで、多くの人々があなたの歯科医院から価値を得ることを願っています。